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総合計量器メーカーが設計の3D化で実現した総工数の削減と社内改革
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総合計量器メーカーが設計の3D化で実現した総工数の削減と社内改革

世界に冠たる製造品質を実現してきた日本のものづくりが、DXを実現するために必要なものとは? 日本製衡所は設計の3D化による製品開発スピードの向上と総工数の削減により、生産性を大幅に向上。それを社内改革の実現へとつなげている。

by Megumi Yoshida
製造 - 2021年8月17日
  • 総合計量器の老舗メーカー、日本製衡所が自社の強みを可視化
  • ビジュアライゼーションがもたらした成功体験が、設計の改革を推進
  • 総工数の削減と全社的な改革を実現し、今後はARも視野に

老舗メーカーとして安定した業績を残してきた株式会社日本製衡所は、この数年間でリリースする新製品数を飛躍的に増やし、それを売り上げの増加につなげてきた。当初は設計者たちから反発を受けた設計工程の3D化を、いかにして成功させ、それを全社的な改革につなげることができたのだろうか。

大型トラックスケールや、工場などで使用されるような主に300kg以上を計測する計量器を製造・販売する総合計量器メーカー、日本製衡所の製品は高い耐久性と精度を誇る一方で重量が重く、価格も比較的高価だ。営業企画課の課長を務める青木賢史氏は「耐久性の高さは長年使ってみないと実感できないので、初めて購入しようというお客様に対しては不利に働きます」と述べる。「3D CADへと移行し、CAEを活用できるようになれば、なぜこの構造なのか、なぜ重いのかの根拠もシミュレーションによって可視化できると考えました」と述べる。

日本製衡所のチームがテストチームで重量を計測中
計量器を過積載取締に使用するマレーシア運輸庁 (JPJ) のチーム [提供: 日本製衡所]

自社の強みを可視化

自社を「よく言えば安定企業、悪く言えば変化も成長もなかった」と評する青木氏は、2000年前後に設計工程を従来のドラフターから2D CADへ移行して以降、「本来であれば、我々はメーカーとして新しい商品をどんどん生み出せたはずです」と語る。だが、その後13年間で生み出せた新製品はわずかに1つ。「通常業務に追われて、新しい商品を投入できなかった。そのことに営業としては忸怩たる思いがありました」。

またコンセプト作りの後、設計、試作、テストを繰り返し、量産体制に入る頃にプロダクトが出来上がるという従来の開発サイクルも、3D CADの導入で加速できると考えた。「従来は、そこから写真や動画の撮影をして、初めて宣材を作れるようになるという流れだったので、製品ができてから売れるまでにタイムラグがあり、販売台数の初速が低かった。3D CADを導入すれば設計や試作の段階でビジュアラーゼーションが可能になり、より早い段階でPDCAを回せるだろうという期待がありました」。

だが、導入には大きな障壁があった。まずはイニシャルコストの問題で、ソフトウェアとハードウェア、サーバ、立ち上げ支援などに1,000万円ほどの予算が必要だった。また設計チームからは、通常業務に加えて新しいことを覚えることに対する反発もあった。「3D CADにすることで設計チームの工数が減るのかというと、そうではない。現場の設計チームの“2Dの現状で何の問題もないのに、わざわざ3Dにする意味がわからない、現場は断固拒否!”というムードは、予算の問題以上に深刻なものでした」。

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ビジュアライゼーションにより量産前にバックオーダーを獲得できたポータブル重量計ZAK-06Wシリーズ [提供: 日本製衡所]

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3D設計を行なった小型軽量ワイヤレステンションメーターWCSのレンダリング (左)、試作 (中)、製品 (右) [提供: 日本製衡所]

成功体験により設計の改革を推進

「全員一致で賛成し、じゃあやろう!という改革など無いと考えています」と語る青木氏は、この状況を打破するため、まずは経営陣に成功体験を得てもらうことを考えた。そして製品の開発の際に、ビジュアライゼーションの部分を外注して行うことからスタート。その成果物を活用することでユーザーのニーズを調査することもでき、結果的に量産を始める前に受注ができたという。「これは弊社にとって初めての経験でした。結局、この成功体験により経営陣を納得させ、現場にも“それならやってみるか”というムードを作ることができたのが勝因となりました」。

これまでAutoCADで培ってきた多くのDWG資産を生かし、またサプライヤーや他部署がさまざまなアプリケーションで作成したデータを変換無しに使えるよう、3D CADにはAutodesk Inventorを採用。「データ変換が必要になると、部品に仕様変更があった場合には再度変換が必要になり、それを繰り返すと差し替え忘れなどのミスが発生することになります」と、青木氏。「それを防ぐことができるのは、大きなアドバンテージでした」。

総工数の削減と全社的な改革

次に青木氏が取り組んだのが、社内への導入だ。「導入費用は助成金や支援制度をフル活用することで抑えることができましたが、イニシャルコストは製品や機器の準備にかかる金額だけではありません。導入から製品を出すまでに5年かかったら、その期間の人件費が浪費されることになる。これを削減するためにベンダーの立ち上げ支援を利用し、立ち上げたら即実用に取り掛かる垂直スタートを試みました。立ち上げ支援に充てる時間は1日4時間、毎月2日間で、6カ月間で合計48時間としました」と青木氏。

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小型/軽量/ワイヤレスの無線式分割重量計、ZEGシリーズのレンダリング [提供: 日本製衡所]

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ZEGシリーズは分割することで荷物のサイズに合わせて計量が可能 [提供: 日本製衡所]

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3D設計により、形状による荷重の変化を社内で解析可能となった [提供: 日本製衡所]

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ZEGシリーズのスケッチ [提供: 日本製衡所]

わずか48時間の支援で実務に対応できるよう、準備は入念に行われた。製造業の立ち上げ経験が豊富なベンダーと、自社業務の分析とヒアリングを徹底的に行い、ありとあらゆる工程を想定してカリキュラムを準備。導入後につまずきがちなポイントを洗い出し、その48時間の中で3D設計における社内ルールをマニュアル化して、人員の入れ替えや新人研修にも備えた。さらに、もうひとつ青木氏には作戦があった。

「設計チームには4名しか人員がいないので、実務をしながら3Dのスキルを均等に上げるのは難しい。そこで入社2年目で比較的業務ウエイトの低い新人を“3Dチャンピオン”と名付けて集中的に教育を受けてもらい、他の3人は後でチャンピオンに教わるというスタイルにしました。彼は文系出身で2D CADに触れたこともなかったのですが、3D設計の面白さにどんどんのめり込んでくれました。映画の中だけで見ていたようなCGを自分の手で作り出し、それを拡大したりクルクル回したりできる経験は、設計チームのモチベーションアップにも繋がったようです」。

こうして試作に入る前にコンセプトから設計をCAEで作り込むことで、結果的に試作から設計への手戻りゼロを実現。これまで設計者のカンや経験に頼っていた設計根拠が明確になり、数値化されたことで経験のない若手にも理解・納得できるようになって、技術伝承の問題も解決しつつあるという。また試作の回数が減ることで、製造チームにおいても製品の製造に取り組む時間が十分に確保できるようになった。

当初は3D CAD導入後、パーツ作図から特殊製品の完全3D設計までの移行、CAE標準化、ビジュアライゼーションまでの期間を5年と予想していたが、それをはるかに上回る3年で目標に到達。13年間で1製品だけだった新製品が、2014年以降の3年間で計8製品にまで激増したという。そしてこの移行の結果、作業時間は実に最大8割減、工数も平均5割減という大幅な効率化を実現することになった。

この導入プロセスを振り返り、青木氏は「3D CADは設計部門だけでなく、会社全体に波及効果のあるツールです。ビジュアライゼーションでスキルに頼らない営業ができますし、CGは製品マニュアルやサービスマニュアルにも使えます」と語る。「設計工数は上がっても、案件を入口から出口まで見れば、総工数は劇的に下がる。3D化は設計だけの改革ではなく、会社全体の改革だということを肝に銘じて、広い視野で考えるべきです」。

今後はARの活用も視野に入れられている。「我々の製品は特に大きく、主力製品は数tもありますから、客先にサンプルを持って行って見せることができません」と、青木氏。「AppleのReality Converterのリリースにより、Inventorで生成したデータがそのままiPhoneやiPadのカメラアプリで、実物大のCGとして実際の風景の上にボンと出てくる。営業が客先に行かなくても、ファイルを送るだけでいい。世界で14億台以上が稼働しているiOSデバイスで、これが実現できるのはすごいことです。3Dには、まだまだ可能性があると思っています」。

#ビジュアライゼーション - #プロダクト デザイン - #プロトタイピング
吉田メグミ。フリーライター。1970 年東京生まれ。デジタル、カルチャー、エンタテインメントなどの雑誌、書籍、Web 記事を執筆。フリーペーパーココカラ編集員。
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