組織の文化を変え、未来の労働力をデザインする 5 つのステップ
全ての企業が価値観と態度、行動のセットである文化を必要としており、それが成功への近道となります。その企業文化を変えるために参考になるであろう、5 ステップによるプランを紹介します。
これまでの事業で投資してきた最先端のツールやテクノロジー、最新鋭の設備などについて考えることはあっても、本来は最も重要なものかもしれない、従業員への投資について考えたことはあっただろうか?
テクノロジーの進化に応じてビジネスを前進させる上で、競争力の維持に必要な変化に従業員も加える必要がある。新しいツールの利用や新たなスキルの習得、新しい役割のいずれかにより、あるいはそれら全てによって、今後従業員の業務は変化していくだろう。彼らと協力し、彼らの準備を整え、そうした変化へ前向きに取り組むことができるよう連携することが重要な仕事になる。従業員の教育と啓発を最優先に考える企業になることで、彼らがより積極的にビジネスへ関与するようになるだけでなく、より生産的になるだろう。
もちろん、そのためには叱咤激励や職業訓練プログラムだけでは不十分であり、組織が企業目標を成し遂げるために必要な、正しい基本的価値観を具体的に示すことが必要だ。それを共に目指すことによって、その価値観と行動が企業文化を定義するものとなる。
企業各社は、キャリアアップが「昇進や出世」ではなく、スキルや技能の拡大であることを、これまで以上に認識しつつある。階級序列の必要性は下がり、個々の役割に順応して、現在必要であることを行える人のニーズが高まっている。最も有益な従業員とは、多様なスキルと技能を有し、仕事上で必要となった際に、そのスキルを機敏に活用できる人材だ。
ビジネスの目標が、新事業への着手、プロセスのデジタル化、自動化の拡大のいずれであっても、従業員の行動や顧客とのやり取りを通じた日々の業務など、企業としての振る舞いが成功につながる道であると導くことが重要なのだ。
オートデスクがサブスクリプション ベースのビジネスへの移行という目標を定めた際、会社の上層部は変化が必要だと確信していた。企業全体が、これまでとは違う形で顧客と関わることになるからだ。ビジネスの目標を実現し、顧客にとっての価値を生み出すことは、企業文化の再検討無しには不可能だろう。
では、あなたの組織が戦略的な目標を達成するために、企業文化のリフレッシュは必要だろうか? もし必要だと考えるなら、次の 5 つのステップを取り入れた変更プランを作ることから始めてみてはどうだろう。
1.企業文化が体現すべき価値観と行動を明確にする
どのような企業文化にも、そこで働く従業員の価値観や行動が表れる。それを変えたければ、何を変えるべきかを明確にする必要がある。最初のステップとして、基本的な価値観を明らかにし、その価値観を支える行動を見極めよう。企業の長期的目標の実現に必要となる新たな価値観や行動に加えて、これまで良い結果をもたらしてきた要素も組み込もう。
最も重要なのは、どのような企業文化にすべきなのかを、しっかりと熟考して定義することだ。そうしないと、とりわけ企業が急成長している場合は、従業員が増えるにつれて企業文化が個人の解釈次第になってしまい、その結果として不明確な、成功への障害になってしまう。最初に時間をかけて方向性をクリアにしておくことは、その行程の迅速化へ、想像以上に役に立つ。これは特に重要なことだ。恐らくは組織の内部で、企業文化の公式な枠組み作りなど不要だと考える人や、それが企業目標の実現を妨たげると考える人が現れてくるからだ。
2. 従業員が求められていることを理解できるコミュニケーション プランを練る
企業文化の枠組みの定義は重要だが、それに関する企業とのコミュニケーションが行われなければ全てがムダになる。特に企業文化の定義を初めて発表する際にカギとなるのは、従業員がフィードバックを提供できるよう、興味を引くようなインタラクティブなコミュニケーションを生み出すことだ。従業員に新たな概念を熟慮する機会を与えるような対面でのワークショップ、リーダーによる早期支援を示す全社または事業単位レベルでの全員参加による会議に加えて、メールやイントラネット、社内ソーシャル メディアなど、より「脇役」的なコミュニケーション活動など、フィードバックできる仕組みを作ることは不可欠だ。企業文化の新たな枠組みが組織内にどう広がっていくのかを評価するのに、それらが重要な役割を果たすことになる。
忘れてはならないのは、これは誰かに何かを「教えよう」としているのではなく、「理解を助けよう」としている点だ。従業員が疑問を投げかけ、価値観を理解し、日々の業務にその価値観を結びつけられるように支援するべきだ。それが企業文化のより深い理解を生むだけでなく、企業のより幅広い成功に従業員を結び付けることにもつながる。
3. 新たな価値観を人材プログラムに組み込む
企業文化を採用や昇進、報奨に組み込むのも優れた方法だ。特に人材採用では、企業文化が候補者の評価や査定方法、待遇の決定に関わってくる。これは、ファースト コンタクトの瞬間から始まり、メールや電話での予備面接、実際の面接に至るまでの、あらゆる接触機会に影響する。候補者はすぐに企業の感触をつかみ、そこが自分にとって適切な場所なのかどうかを判断できるし、適合すると判断すれば入社後すぐに、企業の求める価値観や行動で企業文化に貢献することを厭わないだろう。
また企業文化を実現させるには、企業文化の枠組みを展開し、そこへ適合させる以上に深めて行く必要がある。そのためには、重要な価値観を選び、そうした価値が従業員の日々の業務にどう現れるのかを、期限を定めて集中的に検討するべきだろう。そこには組織内のあらゆるレベルにおける、小規模で指導者の参加したインタラクティブなセッションも含むべきだ。数カ月、数四半期、さらには数年の間に幾つかの重要な価値観へと到達することで、企業文化の変化に対する取り組みの効果と価値を深めることができる。取り組みに費やした時間がビジネスの長期的な促進につながるのだと、常に心に留めておくべきだ。
4. 新しいオフィスやロケーションを新たな企業文化の活性化の機会として利用する
新たな施設を開設したり新たな市場に参入したりする場合は、それが変化を活性化させる機会だと認識しよう。ゼロから始める機会は、それを社の模範として作り上げる絶好のタイミングだ。企業文化の変革の、より迅速な進行にもつながる。社内のその他の領域での取り組みを、加速した方法で形作ることができるからだ。
オートデスクはダブリンの新オフィス設立に際して、こうしたチャンスに恵まれた。世界各地で求人を行なっている 1,000 ポジションのうち 200 を早急に埋める必要があったが、企業文化の新しいイニシアチブを雇用プロセスだけでなく新人研修にも応用することができた。前例のない数での求人が、企業文化に急速かつ著しい影響をもたらし、他の場所でも求められる結果をもたらすであろうモデルが提供されることになったのだ。
5. リーダー自身が「有言実行」であること
これは言うまでもないだろうが、あらゆるレベルの企業のリーダーは、企業文化への取り組みが単なる Web サイト向けの美辞麗句ではないと従業員に示すことが必要不可欠だ。そして、この価値観と行動こそが企業の成功へと続く正しい道であり基盤なのだと、上層部が確信していることも示さなければならない。これは、相当の専念を要することだ。企業のリーダー層、特に幹部は、社内の他のチームが見習えるような企業文化を形作る必要があり、会社全体が追従することを望むのであれば、リーダー自身が同じ立場に立たねばならないからだ。
こうした取り組みに乗り出そうとしている企業は、多くの人が参加するべき取り組みであることを認識しておくことが重要だ。企業文化の枠組みは、検証、パイロット テスト、調整を経て最終形へと至るが、その後も継続して発展していく。最終的に企業文化を支配し、形作るのは従業員だということを忘れてはならない。リーダーとしてできるのは、従業員が企業文化を実践できるような指標を提供することだ。それが、より優れた業務、より良い顧客との関係、そして結局は好調なビジネスを実現することになる。