2021 年の建設技術: 今年注目すべき 5 つのトレンド
パンデミックの進行にともない、人々が安全な距離を保つためバーチャル空間を体験したり、理解する方法を模索しようというプレッシャーも高まっている。それにより、より直感的かつ密接なデータの共有も、イノベーションの必要条件の上位を占めるようになった。
ここで紹介する 2021 年に注目すべき建設技術のトレンドを見れば、現在の状況下で人々の安全を守るため、施工者がクリエイティブな手法を模索していることは明らかだ。彼らは実際に現場に足を踏み入れることを避けつつ、そこで何が行われているのか理解しようとしているのだ。
1. ポケット LiDAR
LiDAR は、現場に建設されたものがデジタル BIM モデルに合致しているかどうかを確認するための、最も正確で効率的な方法だ。レーザースキャン用の既存ハードウェアは、大きくて扱いにくいうえ、その大半が単一のタスクしか実行できない。だが、コンシューマー テクノロジー分野の巨人である Apple と Google により、この状況は変化しつつある。
Google も高度な人感センサーとして機能する、レーダーを基盤としたシステムに取り組んでいる。コンシュマー向けスマートフォンの LiDAR システムは Apple の ARkit のように、合成された環境やキャラクターを既存の環境に重ね合わせる AR の応用を促進することになるだろう。これは、現場に BIM モデルを重ねる、完成した建物の換気経路を確認する、乾式壁の硬化前に使用パターンを突き止めるなど、建設現場でも大いに役立つ可能性がある。
ポケットサイズの LiDAR 機能を建設現場に持ち込むことは、こうした場所の管理を劇的に変化させる理想的な方法となる。LiDAR は材料や人が行き交う現場でも、各段階をほぼリアルタイムで、唯一無二の精度で記録できる。また大規模なインフラ、特に送電網など、人間の目や CCTV チャンネルで確認するには広大すぎるインフラの管理と改修にも活用できる。屋内では LiDAR により、安全上のリスクとなり得る壁の小さな亀裂や不備を検出できる。建設の安全性においても、より詳細で最新の換気に関するアドバイスが受けられるようになり、危険な場所への立ち入り調査の必要を軽減できるようになる。Apple が現在研究中とされるヘッドマウント タイプの LiDAR センサーは、ツールの使用中や重機の運転中にハンズフリーで操作しなければならない作業員には理想的なものだ。
2. 建設現場の電動化
バッテリーの大型化に伴い、建設現場の電動化は、よりクリーンでサステナブルな運用を意味することになる。建設重機は充電式がトレンドとなっている。油圧ショベルやクレーン車、掘削リグ、大型トラックは、その動力源である太陽光や風力、地熱などと同様に、カーボンニュートラルで効率性に優れたものとなりつつある。
Gammons Construction はバッテリー価格の急落を利用し、輸送コンテナサイズのリチウムイオン バッテリーである Enertainer を配備することで建設現場からディーゼルの煙を排除できた。これらのユニット (専用設計もしくはディーゼル エンジンへレトロフィットしたもの) は、カーボン フットプリントを縮小するだけでなく、より信頼性が高く、メンテナンスの必要性も低い。騒音と汚染が低減することで、住宅地での建設作業時間の延長も可能にしている。
こうしたユニットの多くは未だに電源コードを必要とするが、それも過去の話になるかもしれない。Autodesk Technology Center のレジデントで、サンフランシスコを拠点とするスタートアップ企業の PHION Technologies は、電源コードや充電パッド無しに約 3.7 m の距離からデバイスをワイヤレス充電できる、ワイヤレス電源/データ システムのプロトタイプを開発している。その最終目標は、建設ロボットの位置検出機能を提供し、ワイヤレス ネットワーク接続性を支援する、半径 9.2m に及ぶスケーラブルな電源だ。
3. どこからでも現場に向けられる (もしくは現場の中にある) 眼
新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、誰もがリモートコラボレーションを短期間で学ぶ機会を得た。だが一部の企業はパンデミック以前から、建設向けソフトウェアとハードウェアにより、遠隔地とのコラボレーションをより円滑に進める方法を研究していた。その好例が Resolve だ。Resolve を使用することで、設計者と施工者はそれぞれの基準で BIM モデルを調査できる。巨人のように上空から全体像を確認することも、地上から確認することも、フロア毎に確認することも可能だ。ワイヤレスの VRヘッドセット Oculus Quest を使用し、Autodesk BIM 360 で操作できる Resolve は、複雑なモデルをイマーシブな VR 環境へ変換し、音声による注釈の作成や、バーチャルモデル内でカラフルなアバターを用いた計測やスケッチが行える。
この種のデータをフィールドへともたらすハードウェアでは、ハンズフリーで直感的な操作が必要となる。Vuzix の スマート グラスは GPS センサー、3 軸加速度計、スピーカー、マイク、4K ビデオ カメラを搭載しており、シームレスなオーディオ/ビジュアル コミュニケーションを実現。手で操作したい場合には、タッチや動きに反応する Microsoft HoloLens 2 で、スワイプやジェスチャにより仮想イメージを操作できる。
4. ヘルメット ドローン
第 1 世代の建設現場向けドローンは現場を観察するためのもので、触れることは想定されていなかった。フォトグラメトリの活用は時間とコストの削減をもたらし、現場の効率性と安全性を向上させた。新世代のドローンは着陸後も機能するよう進化しつつあり、最も危険で困難な仕事を人間の手から解放するようプログラムされている。
ジョージア工科大学から誕生した Autodesk Technology Center レジデントの Skymulは、鉄筋の交差部を結束できるドローン システムを開発している。鉄筋の交差部を固定するのは、建設現場でも非常に退屈かつ肉体的に過酷な仕事のひとつだ。また Terra Drone は、広大な山岳地帯に地震センサーを投下するドローンを実験中だ。
UAV (無人航空機) の最大手 DJI が先日リリースした新しい農業ドローンは、パワフルな噴霧機能を搭載しており、この機能は建設現場にも応用できる可能性がある。 DJI AGRAS T20 には最大積載量 (ペイロード) 16L の噴霧タンクと、噴霧幅 7 m のノズルが搭載されている。全方向レーダーは障害物を全ての水平方向から検知でき、ソフトウェアとハードウェアは作物の生育状態をモニタリングして、様々な対策を講じることが可能。果樹園では、木々の形状を識別することで飛行ルートを生成できる。このドローンはペイロードが大きく、ペンキや接着剤の塗布、緑化屋上への水やりなどが可能なので、建設現場でも活躍するだろう。

5. 安全と効率のための接触者追跡
コロナウイルス感染症が招いた難局により、建設現場での作業員の健康と安全のために、接触者追跡が決定的に重要であると明確に示された。往来が激しく、複雑で、常に変化している建設現場は、空気感染が広がるのに最適な空間となっている。
建設中の人々の安全を守るため、現場全体の健康と換気のデータを追跡する方法に重点的に取り組んでいる企業もある。 WakeCap システムは、ヘルメットに装着されたユニットを活用する。このユニットはレシーバーと通信し、信号強度で距離を測定して、現場での位置を追跡できる。このユニットは、現場のワークフローとソーシャル ディスタンスの確保、換気のボトルネックとなる箇所の追跡、最も利用しやすい道具置場や休憩室の位置のマッピングをパワフルに支援する。
WakeCap が使い勝手の良さに重点を置いている一方で、ウェアラブル センサー企業 WorkerSense はさらなる機能性を追求することを選択。温度、湿度、照度、動きを 9 軸で検知するヘルメット装着型センサーを提供している。
このソフトウェア プラットフォームは、作業員の位置、人員構成データ、コスト コード、PPE (個人用保護具) の使用、証明の実施、インシデントのログ、環境状態のモニタリングを行う。Nokia は摂氏 0.3 度単位の精度による体温自動検出システムを開発中だ。