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サンゴ礁保全のカギとなるか: 3D プリントによる着床具の開発
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サンゴ礁保全のカギとなるか: 3D プリントによる着床具の開発

地球上で最も多様性に富み、不可欠なエコシステムであるサンゴ礁を保全する有機的な取り組みが進行中。その復活と将来的な増殖を確実なものとすべく、新たなテクノロジーが活用されている。

by Elizabeth Rosselle
サステナビリティ - 2018年7月9日
サンゴ礁 保全 エルクホーン
このエルクホーン サンゴは SECORE により 5 年前に 移植された。その後成熟したコロニーへと成長し、キュラソー島の海中の他のエルクホーン サンゴ コロニーとともに産卵するようになっている [提供: SECORE International/Paul Selvaggio]

熱帯のサンゴ礁は、その鮮やかな色彩が美しいだけでなく、海洋生命に不可欠な存在だ。サンゴ礁そのものが生態系に占める割合はわずかだが、地球上で最も多様性に富んだ生態系を包含しており、数千種もの動植物に住処を提供している。多数の人々が暮らしを依存する水産業や観光業、海岸保全などの産業も、全て健全なサンゴ礁が提供するものだ。

そのサンゴ礁がただならぬスピードで死滅を続けており、気候変動や乱獲、汚染によって、長期的な造礁サンゴの増殖にもダメージが与えられている。過去 30 年間で世界のサンゴ礁の 50% が死滅しており、対策を講じなければ次世紀中に最大で 90% が壊滅する可能性がある。サンゴ礁の保全は、まさに緊急優先事項だ。

サンゴ礁の保全と再生に取り組む科学者や水族館員、地元関係者で構成される NGO グローバル ネットワーク SECORE (SExual COral REproduction) は、カリフォルニア科学アカデミー (CAS)、The Nature Conservancy などとのパートナーシップを通じ、有性生殖によるサンゴ再生の新手法を開発する最前線にいる。

サンゴは固着性、つまり植物のように根を生やし、簡単には移動できない状態で位置を固定する動物で、海水から餌を取り込んでいる。単体構造が数万集まった「ポリプ」で構成される群体で、その幼生は海底の岩石に付着し、さまざまな形状の礁を形成。成長は年間わずか 3 cm に過ぎず、現在私たちが目にするような大型サンゴ礁の多くは、数千年の歳月をかけて形成されたものだ。

サンゴ礁 保全 キュラソー
キュラソー島の海中のサンゴ礁を調査する SECORE のダイバー。サンゴ礁が地表で占める割合は 0.1% 未満だが、多様な海洋生態系の 30% 以上に生育環境を提供している。 [提供: SECORE International/Paul Selvaggio]

SECORE とパートナーは、サンゴの実際の生殖過程を利用した再生手法を開発している。チームは、一部の種のサンゴが放出した卵と精子を収集して受精させ、自由に泳ぎ回ることのできる幼生となるまでタンク内で飼育を行う。幼生はその後、サンゴ上の着床する場所を模した人工着床具に移され、着床が完了すると、それが再生の必要な礁エリアに移植される。

SECORE でプロジェクト、ワークショップのマネージャーを務めるアリック・ビッケル氏は、再生活動の拡大における困難の例として、サンゴ移植のコスト削減を挙げている。「SECORE がコスト削減に取り組む手段のひとつに、手作業で礁に取り付ける必要がなく、牧草地に雑草の種を蒔くように船から投げ込むことのできる人工着床具のデザインがあります」と、ビッケル氏は話す。

3D プリントを使用して SECORE とパートナーは 2021 年までに 100 万ユニットの着床具を生産し、年間数十万ユニットの生産能力の実現を目指している。現在、プロジェクトの第一段階をカリブ海地域で実施しており、研究と研修の拠点はメキシコとキュラソー島、バハマに置かれている。

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キュラソー島の海中の産卵中のサンゴの近写。このサンゴは放卵放精型で、幼生保育型のように幼生を放出するのでなく卵と精子を放出。 [提供: SECORE International/Benjamin Mueller]

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キュラソー島の海中のスタッグホーン サンゴの配偶子を採集する SECORE メンバー [提供: SECORE International/Barry Brown]

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メキシコのシカレ・エコ・パークの水族館で行われているサンゴの受精作業。まず卵と精子を慎重に混ぜ、その後受精卵を海水で洗浄して幼生の成長を育む [提供: SECORE International/Paul Selvaggio]

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サンゴの卵の近写 [提供: SECORE International/Paul Selvaggio]

「3D プリントによってラピッド プロトタイピングのような作業が可能になりました」と、ビッケル氏。「数種類の材料を検討しましたが、3D プリントであればさまざまな材料を利用できます。また、特に初期のプロトタイプではかなりの投資となる、金型や鋳型の作成コストも削減できます」。

CAS は SECORE の再生プロジェクトと研究に対する主要な資金提供源であり、サンゴ再生の経験と支援を提供している。SECORE は比較的小規模なチームでエンジニアリング能力に限界があったため、CAS はその分野の支援協力を Autodesk Foundation (オートデスク基金) に依頼。SECORE はオートデスクとの連携を通じて、着床具の開発を支援するデザイン事務所を幅広く検討した。

「Autodesk Foundation とのコラボレーションにより、デザイン事務所数社に接触しました」と、ビッケル氏。「次のデザイン段階、また願わくばそれに続くデザイン段階でも支援を受けるには Emerging Objects が最適だと思えました」。

サンゴ礁 保全 着床具
SECORE 着床具の近写。中央あたりにボールダー ノウサンゴが育っている。 [提供: SECORE International/Valérie Chamberland]

エンジニアリング面で大きな課題となったのは、着床具に最適な材料と、そのデザインの組み合わせを見極めることだ。研究者にとっては、サンゴへ好ましい生育環境を提供する一方で天敵となる生命体の定着を防ぎ、手作業で取り付けなくてもサンゴ礁へと固着できれば理想的だ。ここ数年、SECORE とパートナーは粗面仕上げされたセメント製の着床具を使用してきた。だが残念ながら、この材料はサンゴと競合する他の生命体にも快適な生育環境であることが分かった。

「他種との生存競争における問題のひとつが、着床具そのものでした」と、ビッケル氏。「実験結果によると、表面が滑らかであれば競合する動植物を減らせます。目指すところは、その表面にサンゴが定着するのに十分な粗さを持たせながら、海綿動物や藻類など他の生命体が付着しない程度の滑らかさも持たせることでした」。

SECORE の研究者たちは、数年にわたる実地試験と材料の試行錯誤の結果、着床具に非常に有望な材料がセラミックだという結論に至る。2018 年に検証が予定される、さまざまなデザインのプロトタイプの作成に向け、Emerging Objects はセラミックの大規模な 3D プリントが可能な米 Boston Ceramics 社との関係を構築した。「Boston Ceramics は使用する可能性のある、幾つかの生育環境の要求に応えることのできる数少ない企業のひとつです」と、ビッケル氏。

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SECORE International 設立者、常任理事のダーク・ピーターセン博士 [提供: SECORE International/Reef Patrol]

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3D プリントされた着床具の例 [提供: SECORE International/Valérie Chamberland]

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キュラソー島の海中のサンゴ礁に移植される着床具を載せたトレイを運ぶ SECORE のダイバー [提供: SECORE International/Benjamin Mueller]

オリジナルの着床具はテトラポッドのような形状 (デザインのプロセスで Autodesk Netfabb を使用) だったが、その後も SECORE と Emerging Objects は、礁のあらゆる隙間に着床可能で、幼生を保護する最良の機会を提供する他の形状を、手裏剣のような形を含めて模索してきた。「作業グループにはサンゴの幼生の成長を促進し、生育段階初期を海中で生存可能とする、最良と思われるものを提供して欲しいと提起しました」。

SECORE は、複数のセルを組み合わせた複合体を使い、サンゴを受精卵から育てている。サンゴの種類によっては、性成熟に至るまで数年が必要となる。若いサンゴは初期の生育段階の魚やその他の種の生育環境を提供するが、このプロジェクトは長期にわたる展望を持つものだ。

「これは、間違いなく未来へ向けた投資です」と、ビッケル氏。「非常に複雑な生態系の場合、そのエリアに同規模のものが戻るには長い年月がかかります。当面の焦点は、この手法とテクノロジーを向上させることで、こうした再生を破壊の抑止に必要なレベルまで拡大できるかどうか、ということになります」。

サンゴ礁が一夜にして再生することはない。だが科学の進歩により、研究者たちは相当なダメージの回復に貢献できるようになってきている。世界で最も多様性に富んだ生態系に、先進技術と協調努力を通じて、新たな希望が生まれているのだ。

#プロトタイピング - #材料 - #資源エネルギー
ロゼルはカリフォルニア州サンフランシスコとインドネシア バリを行き来するフリーランスのジャーナリスト、コピーライター、デザイナーです。
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