マイ デザイン マインド: LEGO マスター・モデル・ビルダー、ヴェロニカ・ワトソン氏
LEGO マスター・モデル・ビルダーのヴェロニカ・ワトソン氏が、自身の作品のインスピレーションや制作のコツ、さらにはレゴ愛好者の誰もに不可欠なツールを紹介。
ヴェロニカ・ワトソン氏は子供の頃、レゴと、それで実現できるものの可能性が大好きだった。その想像力は、兄弟たちと地下の部屋で、ホグワース城をはじめとするハリー・ポッターにインスパイアされたものを作るときにも、決して制限されることはなかった。
23 歳に成長しても、レゴブロックや想像力を忘れることはなかった。建築と都市デザインを専攻したニューヨーク大学を卒業後、彼女は多くの人にとって夢の仕事に就くことができた。北米でわずか 7 人しかいない、LEGO マスター・モデル・ビルダーだ。
ワトソン氏は、レゴの創造物を新たな芸術性のレベルにまで高めている。彼女はピカソの絵画「ゲルニカ」から女子ワールドカップ チームを讃える像まで、現在の出来事と、自身のクリエイティビティが導くところの両方からインスピレーションを得ているのだ。
そのワトソン氏が、LEGOLAND Discovery Center Westchester での LEGO マスター・モデル・ビルダーの役割や、作品のインスピレーション、制作のコツ、そしてレゴ好きの誰もに不可欠なツールを紹介してくれた。
どうやって LEGO マスター・モデル・ビルダーになれたのですか?
マスター・モデル・ビルダーになるには Brick Factor というコンテストに参加して、そこで課題をこなし、面接を受ける必要があります。

学生時代、週末と夏には、ここ LEGOLAND Discovery Center Westchester で働いていました。ちょうどポジションが空くタイミングで卒業を迎え、未来のマスター・モデル・ビルダーを指名するアトラクションのコンテストが計画されていたのです。参加してみたら面白いと思ったのですが、それに優勝できました。
毎日の仕事はどんな感じですか?
マスター・モデル・ビルダーは、面白い仕事です。イベントやソーシャル メディア向けに、ニュースの題材に合わせて様々なモデルを作ります。カリフォルニアで展示されている、他のビルダーが作った大規模なモデルの修繕や掃除も担当しています。教育も担当していて、ここを訪問する子供たち向けのワークショップや教育プログラムも実行します。

最近取り組んでいるのは、どのようなモデルですか?
間も無く全米オープンテニスがあるので、それに向けたモデルを作っています。全米女子オープンのトロフィーやテニスボール、セリーナ・ウィリアムスをレプリカを作っていますよ。それに秋冬ニューヨーク コレクションのモデルも制作中です。
レゴのデザインへの取り組み方法を教えてください
大抵の場合、特に小さなモデルの場合は、参考とするイメージを見ながら作ります。ここに何かを少し足して、こっちからは何かを少し減らす、という具合ですね。
複雑なモデルの場合、例えば幾何学的なパターンがあるものなら、ブロック用紙を使います。グラフ用紙に似たものですが、レゴ ブロックのサイズになっています。非常に複雑なモデルの場合は、LEGO Digital Designer というデザイン プログラムを使います。
建築を専攻されましたが、それがレゴの作品に影響していますか?
建築とレゴには重なる部分も多いですね。皮肉なことに、建築がテーマとなるようなモデルはそれほど作らないのですが。学校では、建物が作られた時代や、ムーブメントの重要な面などを分析することに、とても長い時間をかけました。

レゴで制作を行う際も、考えるプロセスは似ています。何かを表現しようとしているから、その物体をよく見て、その最も根本的な要素が何であるのかをゼロから考えます。そして、その全ては再現できないので、最も重要な部分を表現します。
これまで作った中で最も気に入っているレゴ モデルは?
ピカソの「ゲルニカ」ですかね。少し時間に余裕があった日に始めたんですが、その日が彼の誕生日だと気付きました。彼を讃えるために、何かをしようと思ったんです。
難しい作品でした。あの絵画には、多くのことが盛り込まれています。どの部分をレゴで表現するかを選び、それをどう重ねるかを考えました。魅力的な作業でしたが、とてもチャレンジングでしたね。

レゴ作品を作る上でのコツは?
レゴの基本ブロックの上部にはスタッド (ポッチ) が付いており、その上や下に別のブロックを積み重ねることができます。でも、反対側にスタッドのあるレゴの部品を使うことも重要です。それを使うことで、モデルに空間と複雑さを加えることができます。これをサイドウェイ ビルディングと呼んでいます。
球体も難しいですね。私は球体のようなものを作る場合、実際に組み立て始める前にブロック用紙でプランを立てます。
モデルを作る際に役立つ、秘密兵器のようなツールはありますか?
とても便利なのは、ブロックはずしですね。主に比較的大きなレゴ セットに収められており、爪を傷めることがありません。

大規模なモデルの場合、制作にどれくらいの時間がかかりますか?
通常は 2 日程度です。「ゲルニカ」の場合は、日曜全てと次の月曜が必要でした。その 2 日は空いているので、作業できるからというのが理由です。
事前にデザインできるかどうかも重要ですね。全米オープンのトロフィーは、あらかじめブロック用紙に書いておきました。高さは 30 cm くらいで、女子シングルスのトロフィーと同寸にしてあります。書くのは 2 – 3 時間で、組むのはずっと早くできました。あれは 2 日もかからず、大体 4 時間程度でしたね。
近目にした、感動するようなデザインは?
ピッツバーグで、フランク・ロイド・ライトの落水荘 (カウフマン邸) を見に行きました。写真では幾度となく見ていて、それに関する記事やエンジニアリング上の問題についても読んでいました。
実際にそこへ行ってみると、全く違っていました。理解することができたのです。それ以外の方法では無理ですね。

この仕事の最良の部分は?
そうですね、何かをゼロから作り上げるのは、とても充実しています。開始した時点では「ああ、これはまず不可能だ」と思うこともあります。でも完成直前には、「これでうまく行く」と感じられるようになります。
たくさんの子供たちとその親が毎日やってくるのは、素晴らしいことです。私の作ったモデルに反応してくれるのも楽しいですね。そして家で作ったモデルを見せて何を作りたいかを話し、私はどう作るのかを聞いてきます。本当に報われると感じます。
Redshift の「マイ デザイン マインド」シリーズは、各界で活躍するデザイナーによる洞察を紹介しています。