ジェネレーティブデザインが「ものづくり」にもたらす3つの利点と未来
ジェネレーティブデザインは、ものづくりの手法を変革しています。それは製造業界を新たな時代へと導き、プロセスを合理化して、持続可能性を高めることになるでしょう。
ジェネレーティブデザインは、機械学習とクラウドコンピューティングをデザインパートナーとする、デザイン手法のパラダイムシフトを象徴するものだ。その核となるのは、デザインの探求とイノベーション、コンピューターによる高度な情報処理だ。
ジェネレーティブデザインとは?
ジェネレーティブデザイン とはAIの一形態であり、ユーザーが定義したエンジニアリング上の課題に対して適切なソリューションを提示し、それをユーザーのニーズに応じて絞り込むことができる。
デザイナーは、製品や部品、ツールの設計中に制約やパラメーターを意識する代わりに、ソフトウェアへ自らが特定した最終用途における限界や可能性を伝える。制約には以下のなものがある。
- 材料
- アジリティ (機敏性)
- 強度
- コスト
- 性能
要するに、ジェネレーティブデザインのアルゴリズムへ「最適解は分からないが、要件は分かっている」ことを伝えるのだ。
現在のクラウドコンピューティングが実現しているスピードにより、ジェネレーティブデザインの自己決定プロセスは、ユーザーが設定した要件に基づいて、何千という検証済みデザインの反復を提示できる。
これまでのデザインとは逆だと考えるといいだろう。プロトタイプを性能判定の基準に基づいて改良していくという従来の方法とは異なり、さまざまなデザイン属性が確立されて、それが最良の結果へ到達する手助けをするのだ。これは、基本的かつ一般的なデザイン上の課題から超高精度設計まで、あらゆるものに使用できるデザイン規律だ。
ジェネレーティブデザインは以下ような製造業界で幅広く活用できる。
- 消費財
- 自動車
- 航空宇宙
- 産業機械
- 建築材料
ジェネレーティブデザインを製造業界で活用するには?
製造業界におけるジェネレーティブデザインの主要な使用事例は、指定した要件を満たす、事前検証済みのデザインオプションを自動作成するものだ。これは、効率的な製造には特に重要だ。部品やツールは、ときには固定されたワークフローやパイプラインに、デバイスやプロセスの一部として(その方法論や物理的に)適合させなければならない場合がある。

ワークフロー全体を新しい部品に適合するよう再構築することは、業務の中断をもたらし、コストもかかる。それが適合するパラメーターの幅は、極めて狭い可能性がある。人間のデザイナーは、そうした厳しい制限の中で試行錯誤するための専門知識を有しているが、Autodesk Fusion 360などのジェネレーティブデザイン・ソフトウェアを使用すれば、無数のバリエーションを模索し、重量や材料のコストを最小限に抑えたり、性能指標を最大限に高めたりすることが可能だ。
アディティブマニュファクチャリング、CNC機械加工、鋳造など既存プロセスの多くが、ジェネレーティブデザインを導入することで、より良好に機能するようになる。製品の性能向上やコスト削減、革新的なデザインコンセプトの探求などに活用できる。
ジェネレーティブデザインがもたらす3つの利点
製造プロセスへジェネレーティブデザインを導入することには大きなメリットがある。それにより、機能性を損なわずに部品を軽量化するのが簡単になる。また性能向上やコスト削減と同時に原材料の使用量や環境への影響を低減するなど、サステナビリティ面でも利点をもたらす。
1. 製品性能の向上
材料とデザインは製造においてパートナー関係にあり、物質毎に特性は異なっている。材料が違えば、そのデザインも全く別のものになる。
新たな材料が市場に登場したり、経済的な理由で典型的な材料へのアクセスが制限されたりすると、デザイナーは振り出しに戻され、ワークフロー全体を再構築するという非常にコストのかかるプロセスを踏むことになる。ジェネレーティブデザインであれば、プロジェクトに利用可能なすべての材料を考慮に入れ、より迅速に軌道へ戻ることができる。特定の材料を選択する場合も、柔軟性や剛性、重量、環境要因に対応するパラメーターを選択する際にも、ジェネレーティブデザインのアルゴリズムは包括的なデータセット、つまりクラウドを利用して、設計エンジニアチームよりずっと迅速に、代替案をバーチャルで検証できる。
軽量化
これは単純な物理の問題だが、重量が増えれば、それだけ推進や浮上などの移動は難しくなる。大量輸送の分野では、自動車やバス、飛行機を軽量化し、より少ない燃料で移動可能にすることは、化石燃料を削減するための明確な道筋でもある。
工業時代の重たい鉄や鋼などに代わる、グラフェンや炭素繊維など軽量な材料に関心が集まっている。
材料の質量を削減することで、さまざまな節約効果が得られる。
- ロジスティクス: より軽量の製品を出荷することで、輸送エネルギーの消費量当たりの輸送量が増加する。
- 製造: 工場でもリビングの食卓でも、ものづくりはより迅速で、より簡単になっている。
ジェネレーティブデザインを用いて地球規模、社会規模で材料を削減することは、増加する人口を支えるために必要なものを、より少ない原材料で生産する能力の向上につながる。研究によると、材料の使用量を最大で40%削減できる。
サステナビリティは軽量化の重要なメリットであり、製品が軽量化すれば、それだけ必要な原材料も少なくて済む。ジェネレーティブデザインでは、異なる材料を基にさまざまなデザインを検討できる。それにより、よりサステナブルな材料を使用できるポテンシャルがある。
例えば航空宇宙関連メーカーのエアバスは、A320のギャレーとキャビンのエリアを仕切るキャビンパーティションをジェネレーティブデザインを使って作成したが、これは概念実証の成功例となり、優れた成果が得られた。各パーティションの重量は約30kgであり、A320では1kgの軽量化により106kgの燃料を節約できる。エアバスの計算によると、これをキャビン内の全パーティションに採用した場合、飛行機1機ごとに453.6kg以上の軽量化が可能となり、年間150t以上のCO2排出量削減につながる。
ジェネレーティブデザインをトレイや座席、さらには適切な材料を用いて制御装置や機体にまで拡大すれば、それが環境面にもたらすメリットは明白だ。
自動車部品メーカーのデンソーは、自動車の電子制御式燃料噴射装置から供給される燃料の量とタイミングを管理するECU (エンジンコントロールユニット) の改良にによる、性能向上と軽量化を試みた。ジェネレーティブデザインを用い、オリジナルECUの放熱性能を維持しつつ、12%の軽量化を実現する最適化された形状を考案した。
カナダの二輪車部品メーカー、MJK Performanceも軽量化に取り組んでいる。同社は、所有するハーレーをヨーロッパのレーシングバイクのようなスタイルに改造したいと考える、ハーレーダビッドソン製オートバイの愛好家を対象としたニッチな市場を見出した。大量生産の設計・製造技術では、こうした狭い顧客層にサービスを提供するにはコストがかかり、通常は手の届かない額になってしまう。MJKはジェネレーティブデザインを使用することで、従来はかさばり扱いにくい部品だったトリプルクランプを、軽量かつ独自性のあるデザインへと変化させることができ、しかもその週の終わりまでに生産へと移行できた。
アディティブ技術を利用したプロトタイピングとワンオフ生産の民主化は、盛況な市場に対応する手段をMJKに提供した。必要な性能指標を実現するためにジェネレーティブデザインが最適なパートナーであることを理解すると同時に、その独特の美しい外観がユニークな宣伝効果をもたらした。

[提供: MJK Performance]
ジェネレーティブデザインでは材料科学も重要だ。特定の材料で設計されたコンポーネントの、よりサステナブルな代替材料が存在するなら、それをデジタルモデルに盛り込むと、性能仕様を維持するよう、形状の他の部分が調整される。
未来のツール、デバイス、機器の構成要素も進歩を続けており、ジェネレーティブデザインを推進するクラウドのパワーが、最先端の研究と専門知識の世界への扉を開く。これまでそれほど注目されてこなかった分野にも、イノベーションの浸透が可能になるのだ。例えば長年アルミを使用してきたメーカーが、加硫ゴムで弾性を高められる可能性がある。ポリマー接合部が荷重をさらに吸収し、また構造体の他の部分にもより安価かつ軽量な材料を使用できるようになるかもしれない。
2. コスト削減
ジェネレーティブデザインの採用により製造業界へもたらされる、最も魅力的なメリットのひとつがコスト削減だ。形状の小型化は、平方ミリ単位でコスト削減につながる。これが世界の製造と物流のパイプラインにまで拡大されれば、その額は驚異的なものとなる。ジェネレーティブデザインは、一般的に約20-40%の材料削減に貢献すると言われている。
だが、これは全面的な変更やものづくりの手法の終着点を変えることに限定されるものではない。
エアバスが概念実証として1枚のキャビンパーティションを変更した例を思い起こして欲しい。3Dプリントによるプロトタイプ作成といった低コストの開発技術を使用し、生産ラインのツールや備品を見直すことで、既存のワークフローを段階的に向上させることができる。
それがうまくいけば、デザイナーはもう少し大きな次の課題に取り組むことができるかもしれない。
それにはビジネス全体を変貌させる可能性がある。また、コスト決定に役立つツールは、ジェネレーティブデザイン・プロセスの最初の段階に盛り込まれている。Fusion 360にはさまざまな材料に基づいて形状のコストを見積もる報告ツールが含まれており、それを図表化し、数量に応じてどう変化するかを簡単に確認できる。
ではアディティブマニュファクチャリングや部品組立、鋳造、CNC機械加工などの既存の技術において、ジェネレーティブデザインはコスト削減にどう貢献できるのだろうか
ジェネレーティブデザインとアディティブマニュファクチャリング
ジェネレーティブデザインとアディティブマニュファクチャリングは、ピーナッツバターとジャムのように相性が良い。極めて複雑な形状も、最小限のコストで作成可能だ。そのため、アディティブマニュファクチャリングはジェネレーティブデザインを使用した部品の製造に適している。事実、アディティブマニュファクチャリングを最大限に活用するには、複雑で高性能な形状を生み出せるジェネレーティブデザインの使用が適している。それが生み出す、最も軽量で堅牢な形状を製造する唯一の手段がアディティブマニュファクチャリングなのだ。
従来の旋盤やCNCプロセスでは、こうした構造体に必要なディテールに対処できないことが多いため、ジェネレーティブデザインにはアディティブマニュファクチャリングが最適だ。また、従来のCAD環境でモデリングされたデザインは、アディティブマニュファクチャリングが提供するきめ細かさを活用できない。
例えば3Dプリンターは、プロトタイプ作成やプレゼンテーション用に、安価な材料を何種類も使用するデジタルモデルを作成できる。何度でも改良とプリントを繰り返し、製品の生産準備が整ったら、同じデジタルアセットをシームレスに実際の生産ワークフローへと移植することができる。

ジェネレーティブデザインによるパーツの一体化
2世紀にわたる工業デザインと製造の歴史は、製造の分野に、部品やツール、機器、装置、パーツや、その一部、他のものを作るために使用されるコンポーネントなど、さまざまなものをもたらした。ここには知力を要する専門知識が多く集まっている。プロジェクトのたびに新しい形状をデザインするのではなく、ここからサンプリングしてプロジェクトに最適なパーツを組み合わせるのが、最速かつ低コストな方法になっている。
ただし3Dプリントのような低コストのプロトタイピング/製造手法を用いることにより、既存のデザインを組み合わせる代わりに新たな形状を導入するコストは低減しており、それは従来の「パズルのピース」的なアプローチをはるかに上回る結果となり得る。
例えばゼネラルモーターズのエンジニアはFusion 360のジェネレーティブデザイン・テクノロジーを用いて、標準的な自動車部品であるシートブラケットを再設計し、それを従来の8つの部品で構成されるものでなく、単一のステンレス部品としている。ソフトウェアは、シートベルトの留め具をシートに固定したり、シートを床に固定したりするためのシートブラケットの150種類以上ものデザインを生成した。新たに設計されたこのパーツは、従来のブラケットより40%軽量化され、その強度は20%向上している。既存のものへの先入観がなく、性能基準だけを把握するジェネレーティブデザインは、必要なときにはクリエイティブにもなれる。従来は無数の部品を組み合わせていたものが、一体型の部品となる可能性もある。
ジェネレーティブデザインと鋳造
アディティブ技術がまだ従来の手法を凌駕するほどには発展していない分野に金属鋳造 (熱した金属を鋳型に流し込んで特定の形状に固める) があり、特に、大型または重量のある合金を扱う場合にはその傾向が高い。アディティブマニュファクチャリングは金属鋳造プロセスにも応用されているが、現時点では生産でなくプロトタイプの作成でのみ使用されている。
ジェネレーティブデザインは、コスト削減や軽量化など、金属鋳造に大きなメリットをもたらす。鋳造では原材料の節約がカギとなる。メーカーは一般的に部品を大量生産するため、節約がより効果的だったり、原材料が非常に高価になったりするからだ。
その一例が、オートデスクがミシガン州を拠点とする鋳造所Aristo Castと提携して開発した、超軽量の航空機用座席フレームだ。チームはジェネレーティブデザインと3Dプリント、ラティス最適化、インベストメント鋳造を用いて、最終的に通常モデルより56%軽量化されたシートフレームを作成した。615席のエアバスA380の場合、年間で10万ドルの燃料費を節約でき、大気中の炭素量を14万t以上も削減できる。
アディティブ技術では、金属鋳造用の金型の製造も可能で、大幅な準備時間や追加コストも必要なく、鋳造よりもはるかに複雑な形状を実現できる。
ジェネレーティブデザインとCNC機械加工
ここ10年でデスクトップ型3Dプリンターへの関心は大きく高まった。だが、その驚異的な盛り上がりにもかかわらず、アディティブマニュファクチャリングは凝り固まった重工業の機械加工技術インフラを打ち破るには至っていない。
ジェネレーティブデザインが製造にもたらす新たな原理の中には、これまでエンジニア扱ったことのないような、より複雑な構造内の深遠なディテールが含まれている。では、従来のCNC製造では対応できないものについてはどうだろうか?
こうした制約は、ジェネレーティブデザインの得意とするところだ。その作業方法は、ソフトウェアにデザインや性能、重量、材料、製造のパラメーターを入力し、可能な限りのデザイン案と、機械加工やフライス加工が製造に課す制約や障壁 (ツールの直径や長さなど) を生成するというものだ。
3軸CNC装置は一般的なツールを使用するが、5軸装置が動作可能な狭い空間での作業にはあまり適していない。5軸装置は、精度は高いがセットアップに時間がかかる。他の業務同様、つねにトレードオフが存在するのだ。
しかしプロセスのデザイン段階においては、ユーザーはジェネレーティブデザインのアルゴリズムに対して、使用している製造プロセスに合わせてデザインを最適化するよう依頼するだけでよい。3軸CNC装置では、アディティブによるプロセスが得意とする過剰な曲面や格子状の構造、また5軸装置に適した小径開口部は得られない。
例えば英国を拠点とするEvolve MH Development Engineeringは、電気駆動のハイパーカー向けに、より軽量でコスト効率の高いパーツをデザインしたいと考えた。電気自動車で性能や航続距離の目標を達成するには軽量化が重要となる。また、2.5軸CNCフライス加工に適したパーツであることも求められた。
エンジニアチームはFusion 360を使用し、強度や剛性、性能などのパーツの要件やパラメーターを入力。最終的にチームが電動ハイパーカー用に作成した部品は、当初のデザインより40%軽く、記録的な速さで完成できた。
3. 新たなデザインコンセプトを検討することでイノベーションを拡大
ジェネレーティブデザインの潜在的なメリットのうち、最も当たり前だがまだ知られていないのは、製造業界全体にイノベーションの文化を浸透させる点だろう。当初はジェネレーティブデザインの利点に懐疑的だったCTOやエンジニア、デザイナーの多くが、最終的にはジェネレーティブデザインの可能性を最も率直に伝える伝道師となっている。
ジェネレーティブデザインはクラウド上で動作するため、デザイナーやエンジニアは、従来の手法では不可能だった他のアイデアやテクニックに触れることができる。
工業エンジニアは、デジタルデザイナーとの連携を向上させることができる。CTOは材料にどのように力が加わるかを理解できる。工場の管理者は、コンピューターならひとりの人間が独力でやるよりも優れた第一歩 (あるいは10、100の選択肢) をもたらすことが可能なのだということを把握できる。イノベーションと連携は密接に関連している。ジェネレーティブデザインを使用することで、可能性は大きく広がる。

[提供: SRAM]
シカゴを拠点とする自転車部品メーカーで、イノベーションラボでもあるSRAMは、知識豊富な愛好家が多い熱心な顧客層向けの部品である、オフロードサイクリスト用パーを製造している。同社はアディティブマニュファクチャリングとジェネレーティブデザインを組み合わせなければ製造不可能な、複雑な形状の自転車のクランクアームのプロトタイプを作成。これは、ジェネレーティブデザインが他の自転車部品にどう役立つのかを知るための理想的なテストケースとなった。この経験がきっかけとなり、同社はデザイン、材料、コスト面で新たな可能性と革新を模索することになった。SRAMは、ジェネレーティブデザインが同社のビジネスコンセプトに大きな役割を果たしていると話す。
もうひとつの例は、現代自動車グループの一部門であるCRADLEとデザインスタジオSundberg-Ferarの合弁事業、Elevateだ。ElevateはSF映画に出てくる昆虫のような外観をした車両で、4本の多関節の「脚」の先に車輪が付いており、2種類の走行スタイルと2種類の歩行スタイルの4種類のモードを組み合わせて移動できる。
Elevateに使用されている無数のパーツはこのコンセプトのためにゼロから設計されたもので、その多くがジェネレーティブデザインにより極めて軽量となっている。

熱や寒さ、放射線、高速の粒子の猛攻、慣性による目のくらむような加速度など、地球上のどこにも存在しない環境に直面する宇宙は、あらゆる材料科学にとって究極の試練かもしれない。わずか数グラムの軽量化が何十万ドルもの節約につながる可能性がある宇宙開発は、性能を維持しつつ質量を最小限に抑えるという点で、究極の取り組みをしていると言える。
その中でも最も厳しい取り組みをしている機関が、NASAのジェット推進研究所だ。同研究所ではジェネレーティブデザインが、質量を抑えながら性能を向上させた惑星外着陸船のコンセプトを開発する上で理想的なパートナーとなっている。
トポロジー最適化の先にあるジェネレーティブデザイン
ジェネレーティブデザインは、トポロジー最適化などの他のデザイン最適化アプローチと混同されがちだが、そこには重要な違いがある。従来の方法で作られたデザインはどれも、問題解決のためのエンジニアによる最善の推測に過ぎない。トポロジー最適化は、その時点からしかプロセスに加わることができず、人間が作ったものを漸進的に向上させるものだ。
だが、ジェネレーティブデザインは、より早い段階からプロセスに関与する。それはユーザーの経験値を問わず、ユーザーがうまくいくと考えることでなく、自身のデザインで実現すべきことの制約条件に基づいてアイデアを提示する共同デザイナーとなる。もっと簡単に言えば、トポロジー最適化はオリジナルの解決策から材料を除去するが、ジェネレーティブデザインにはオリジナルの解決策が必要ない。ジェネレーティブデザインが行うのは、ユーザーが解決策にたどり着くための検討作業だ。そこからの最適化の道筋は、ひとつの出発点からぴったり合致したものである必要はない。他の出発点に戻り、無数の選択肢を生成することが可能だ。

製造業界におけるジェネレーティブデザインの未来
ジェネレーティブデザイン技術は、研究、スタートアップ、その他のイノベーションへの道筋を通じて歩みを続けている。こうした進歩は、人間とテクノロジーとのやりとり、人間同士のやりとりをも変化させる。エンジニアがCTOやデザイナーと連携するなど、分野を超えたコラボレーションが進み、製造業のイノベーションが進むだろう。
より速く、よりスマートなテクノロジー
自動車、航空宇宙、スポーツ用品を対象とした研究によると、ジェネレーティブデザインによりコストは最大で1/5に、また質量と開発期間は最大で半分に削減されたという。
だが世界の製造業界全体に対するコストや材料、開発期間、環境への影響の削減を別としても、その具体的な進歩はラボやスタートアップ、研究施設から徐々に浸透している。
その一例が、高度な流体力学を考慮したジェネレーティブデザインだ。液体や気体の動きが性能に大きな影響を与える環境下での動作が必要な工業用部品は多数存在している。
性能ベンチマークとデザインパラメーターをジェネレーティブデザインのアルゴリズムに入力すれば、ひとつのパラメーターで身近な環境がどう反応するのかを、次のような属性を用いて表現できるようになるかもしれない。
- 気圧が上がれば温度も上がるか?
- 急速に過冷却されるか?
- 空気の動きは、特定の表面に別の表面より影響を及ぼすか?
流体力学に加えて、小規模なアディティブや3Dプリントなどの技術は、新しいアイデアで身を固め、この分野に何ができて何ができないかという先入観を持たずに入ってくる新規参入者にとって、その障壁を劇的に下げることになるだろう。
技術が進歩を続ける一方で、ジェネレーティブデザインがもたらす最も重要な変化として、人間に与える影響が挙げられる。ジェネレーティブデザインは、製造業界に従事する人々が直面する課題を、より良い方向へと根本的に変えていくだろう。開発期間が短縮されることにより、デザイナーやエンジニアは、業務だけでなく創造の領域を広げることができるのだ。